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サカタ交配

メロン 「マルセイユ」

品目 メロン
原産地 アフリカ、インド
科・属名 ウリ科キュウリ属

管理作業の軽減を実現!地這い用赤肉ネットメロン

特性

1. 定植から収穫まで、整枝、摘果の労力がほとんどかからない超省力栽培の品種です。
2. 本葉3枚を残して摘芯し、以後は整枝を一切しません。
3. 草勢はおとなしく、草姿はコンパクトで小葉、葉色は濃緑色です。
4. つる割病抵抗性(レース0、レース1、レース2)、うどんこ病にはきわめて強いです。接木の必要がなく栽培が容易です。
5. 雌花の着生は安定し、着果性極良です。低節位にまとまって着果し、玉ぞろいがよいです。
6. 裂果、変形果が少なく上物率が高いです。成熟日数は約50~55日の早生品種です。
7. 果実は1.1㎏前後、果皮は灰緑色、果形は球形で鮮明なストライプが入り、盛り上がりのよいネットが安定して発生します。
8. 果肉は橙色、糖度は高く、肉質は粘質で、香りがあり、収穫直後から食味はたいへんよいです。発酵果、うるみ果などの変質果がありません。収穫後の日もちがよく可食期間が長いです。
9. 離層の発現により収穫適期の判別が非常に容易で、完熟収穫ができ、品質にバラつきがありません。

適応性

パイプハウスや大型トンネルの栽培に適する地ばい用品種です。温暖地では6~7月出荷に適します。栽培適期より早まきでは、低温による着果不良、小玉果や発酵果の発生を招き、品質の低下を招くので行いません。

肥培管理

草勢はおとなしいですが、多肥、とくに窒素、カリ肥料の過剰は、果形の乱れ(三角果)などの外観の品質低下につながるとともに、糖度の上昇不足の原因となるので注意します。
一般的な地ばいネットメロンに比べて、施肥量はいくぶん少なめがよいです。10a当たり窒素7~8㎏、リン酸10~20㎏、カリ10~12㎏。苦土石灰100~120㎏に完熟堆肥2~3tを標準とします。完熟堆肥であっても、牛ふんなどいわゆる厩肥を使用してつくられた堆肥を使うときは、窒素、カリの含有量が多いので、その分、施肥量を少なくする必要があります。ただし、肥料の流亡が激しい土壌や砂地などの地力の少ない圃場では、栽培後半の草勢低下が予想されます。そのような圃場では、元肥に緩効性肥量を併用するか、追肥を行う必要があります。

育苗・育苗管理

定植の適期苗は育苗日数30日前後で本葉は2.5~3枚です。本葉3枚を残して早めに摘芯します。50~72穴のセルトレーなどを利用する場合は、定植後の摘芯となります。苗齢にあわせた温度管理で、徒長のない、ガッチリした苗をつくります。
※育苗管理の重要性
通常の整枝を行うメロンの場合、10節目以降の孫づるに着果させるので、低節位の雌花は飛んでしまっても問題は目立ちません。しかし、マルセイユは5節目ぐらいまでの低節位の孫づるに着果させるため、これらの雌花が分化する育苗期の栽培管理が重要となります。この時期に極端な低温、高温、乾燥、光線不足などのストレスにあうと、雌花の形成不良の原因となり、着果不良や寄形果の発生につながります。

定植および定植後の管理

畝間2.3~2.7 mで、株間は約90㎝です。定植には16℃以上の地温が必要で、地温不足での無理な定植は枯死や植え傷みを起こし、つる枯病の多発や雌花の着生不良を招きやすいので注意します。また、トンネル栽培では、240~270㎝幅の被覆資材を用いた大型トンネルの使用が望ましいです。栽培適期のなかでも早い作型を行う場合は、苗の活着や初期生育を考えて、不織布などで保温をするとよいです。
※定植位置と誘引
ハウス栽培、トンネル栽培ともに、収穫終了まで茎葉をできるだけ傷めないように、また、収穫時に果実の離層が確認しやすいように、畝の通路側に定植して、片方誘引でつるを伸ばして通路を確保します。

整枝方法

本葉3枚摘芯後、整枝は一切しません。整枝、摘芯などによるつるばては、糖度の上昇不足など、品質低下の原因となるので絶対に行いません。
※草勢の維持
マルセイユは、葉枚数(葉面積)と成長点をできるかぎり多く確保し、草勢はおとなしく維持するのがよいです。したがって、本葉3枚摘芯後、芽かき、芽摘みなどの整枝は一切しないのが栽培の基本となります。収穫終了まで、茎葉を傷めることなく草勢を維持するために、つるを片方誘引して、通路を確保することが重要です。収穫までは茎葉を傷めることがなくても、収穫が始まると、茎葉を踏んでしまい一気に草勢が低下したり、目に見えた草勢の低下がなくても、葉を傷めたり灌水不足でのしおれなどがあると、2回目以降の収穫果実の品質低下につながります。
※通路に伸びたつるの処理
生育が進むにつれて、複数のつるが通路に伸びてきます。これらを踏みつけたり、通路を確保するためにつる先を切り詰めたりすると、切り口からの病原菌の侵入や草勢低下の原因となり、果実品質の低下につながります。したがって、伸びたつるは通路の進行方向に流すようにして、茎葉の保護と同時に通路の確保に努めます。つるが通路をふさぐと、茎葉を傷めやすいだけでなく、梅雨期など通路に水がたまり、病害の発生の原因となるので注意します。

温度管理

晴天の日中はハウス、トンネル内を蒸らさないように28~30℃を目標に管理します。高温管理を続けると、軟弱な草姿になり雌花の着生不良や着果不良になりやすく、後半の草姿低下にもつながります。夜間の最低温度は10℃を下回らないように努めるとともに、開花期から肥大期は15℃程度に管理します。

水分管理(潅水)

品質のよい果実を収穫するには、収穫終了までスタミナのあるつるづくりを心がけます。そのためには根張りのよい、しっかりした草姿のつるをつくります。定植直後の株元への灌水は地温を下げ、活着を遅らせることが多いので注意します。
定植から着果までは極端な乾燥にならない程度の灌水にとどめ、ゆっくり生育させて根を深く張らせます。摘果後はムラのない灌水をして肥大を促進します。一度に多量の灌水をするより、何回にも分けてこまめに行うほうがよいです。着果後30~35日で果実の肥大は8~9割に達しますが、その後は収穫終了までつるをしおれさせない程度に適宜灌水します。つるのしおれは未熟果での離層の発現につながり、品質のばらつきを招くので十分注意します。
とくに充実期、仕上げ期以降は、1番果以外の着果負担によって草勢が低下しやすいです。そのため、従来のメロンのように生育ステージにあわせて土壌水分を控えると、水分不足で草勢が低下し、糖度の上昇不足などの品質低下につながります。したがって、従来のメロンの灌水方法とは異なり、収穫終了までの草勢維持と品質向上のため、ある程度の継続灌水が必要です。
トンネル栽培であっても、灌水チューブによる灌水管理が望ましいです。
また、トンネル栽培では果実に雨が当たらないようにして、亀裂ネットの発生を防ぎます。

着果

ミツバチによる交配が着果、肥大性、ネットの発生、糖度ですぐれており、良品生産には欠かせません。開花期の夜温が低すぎると、花粉の稔性が落ち、着果不良を招くので注意します。
※着果をそろえます
マルセイユは低節位の孫づるの雌花を確実に着果させることが大切です。一般的な地ばいメロンに比べて、低節位着果のため10日程開花期が早いです。着果目標節位の開花は定植後20~25日で、ミツバチの放飼が遅れると低節位の雌花は着果し損ねてしまいます。ならし期間を含めると、遅くとも定植後2週間前後にはミツバチを放飼する必要があります。1株当たり5果程度の果実がなります。草勢とのバランスを維持しながら着果、肥大するので、摘果は必要ありません。また、結果枝の摘芯も不要です。
ただし、株元で子づるに直接着果する果実は、小玉の偏平果となるので摘果します。
また、ミツバチは、目標とする着果を確認したら、できるだけ速やかに引き上げます。
※摘果の必要な場合
強草勢の場合や低節位着果に失敗した場合には着果過多となりやすいです。本来ならば、低節位に着果した後の余分な果実は、鶏卵大くらいになるまでに自然落果するはずです。しかし、強草勢により自然落果しなかったり、節位が上がるほど一度に開花する花数が多くなり、強草勢と相まって落果しない大きさまで一気に肥大してしまったりすることがあります。そのような場合は、果実の肥大不良、品質低下につながるので、着果位置がそろうように、1株当たり5~6果程度に摘果します。

病害虫防除

肥料過多や換気不足、光線不足に注意し、しっかりしたつるに育て、べと病、つる枯病、菌核病、灰色かび病などを予防します。うどんこ病には強い耐病性、つる割り病レース0、レース1、レース2には抵抗性がありますが、立枯性疫病、黒点根腐病や綿虫が発生する圃場では前もって土壌消毒を行います。アザミウマ、コナジラミ、ハダニ、アブラムシ、ハモグリバエなどの害虫は、開花前に確実に防除しておきます。

収穫

開花から収穫までの日数は約50~55日で、収穫適期の判別は、へたまわりの離層の出始めから、完全に離層がまわるまでを目安にしますが、圃場ごとに必ず試し切りを行い、収穫適期を確認します。収穫期の幅は決して広くはないので、こまめな収穫作業が必要です。収穫遅れは、ストライプへのひび割れや、尻割れにつながるので注意します。とくに多肥栽培で草勢が強い場合にその傾向が強いです。メロンの糖度は収穫期の直前に急激な上昇を示すので、若どりは絶対にしません。

出荷調整

収穫後、離層の部分が褐変、腐敗することがあります。これは離層部分から汁液が出て乾燥せず、雑菌が侵入しやすくなるためで、多肥栽培などで草勢が強い場合に多く見られます。また、収穫の際にへたの切り口から汁液が出て、離層部分を汚くすることがあります。したがって、圃場の土壌特性を加味した施肥設計での栽培を心がけるとともに、収穫した果実の水洗いは厳禁であり、出荷調整の段階で、布などで汁液をふきとるなどして外観の向上に努めるとよいです。

作型図