アスパラガス 「ハイパーウェルカム」
収量性、上物率に優れ高品質な交配品種
特性
1. 「ウェルカム」に比べ、早生・多収の交配品種。
2. 草勢が強く、雄株率は 60 ~ 70%と高いため、生育のそろいがよく作りやすい。
3. 若茎は頭部の締まりがよく、形がまとまり、緑色が濃く鮮やか。茎は太くそろうため、上物率が高い。高温期でも穂が開きにくい。
4. 根から入るフザリウム菌やさび病に強い。秋まで茎葉の持ちがよく、次年度の萌芽率も高い。
5. 露地栽培はもちろん、特にハウス内の早期出荷で能力を発揮する。
適応性
露地栽培だけでなく、早期出荷を狙う促成、半促成、トンネル栽培、ハウス内の立茎栽培で特に能力を発揮します。などの幅広い作型で能力を発揮します。
播種・育苗管理
播種量は、定植する予定本数の 10~ 20% 多めにします。200 穴セルトレーを用いる場合は、茎葉が株当たり 2 本以上になった時点で 9cm 以上のポリポットに鉢上げします。128 穴セルトレーを用いる場合、ハウス栽培では、セル苗をそのまま定植できます。
露地栽培では、上記と同様のポリポットに鉢上げし、育苗後に定植するのが望ましいです。
発芽までは 25℃を目標に加温し、土が常に湿っている状態を保ちます。発芽後は、無加温ハウスで管理し、灌水はトレーやポットなどの表面が乾いたら、底から水がしみ出すまでしっかり行います。アスパラガスは、育苗期間が約 2 カ月と比較的長いため、液肥などを活用し、肥料を切らさないようにしてください。
1 年目(定植年)の管理
圃場は、アスパラガスを栽培したことがなく、茎葉の生育期間中、一日を通じて十分な日射量が確保できる場所を選びます。根が強い品種なので耕土が深く、肥沃 (ひよく) で排水性の高い圃場を選ぶことが大切です。十分な根域を確保するため、作土層が60cm以上となるようにします。
特に水田転換畑では、必ず明きょ・暗きょの設置、耕盤破砕、高畝などの排水対策を行います。しっかり心土破砕、深耘を行った上で、堆肥(未熟なものは避ける)を十分に施用してください。10a 当たり成分量で窒素15 ~ 25kg、リン酸10~20kg、カリ10~ 20kg 施用し、しっかり混和・耕耘 ( こううん ) します。phは 5.5 ~ 6.5程度に調整します。過剰な堆肥の施用は、病害や生理障害の発生を助長する場合もあるので控えます。
また、露地栽培では、水分保持・抑草のために黒もしくはグリーンのマルチフィルムを使用し、2 年目の萌芽開始時期までに除去するのが望ましいです。
2 年目以降の管理
収穫管理から施肥:定植の翌年から収穫が可能ですが、地下部をしっかり養成するため収穫期間は 2 週間を目安とします。同様の理由により、3 年目は4 週間、4年目は 6週間程度で収穫を打ち切るようにしてください。5年目以降、収穫期間を2カ月以上延ばすことも可能ですが、前年の株養成中の生育が十分でない場合は、早めに打ち切ります。
追肥は、10a当たり年間合計の成分量で、窒素15 ~ 20kg、リン酸15kg 程度、カリ15kg 程度を萌芽前と春芽の収穫終了後に分けて畝上に施用します。
誘引から年内の管理:支柱は、高さ1.5m以上の十分に強度がある鋼管などを用い、畝の両側に1.5 ~ 3m間隔で設置します。誘引はフラワーネット、ハ
ウスバンドなどを用います。1 段目は 50 ~ 80cm、2 段目は 1 ~ 1.2m の高さに設置します。茎葉がハウスの内側に触れるようであれば、適宜、摘芯してください。1 年目と同様、茎葉が完全に黄化し、枯れ上がってきた段階で地際部から刈り取り、圃場外に持ち出します。
収穫栽培方法別の管理のポイント
< 長期どり栽培における夏芽収穫(ハウス内立茎※栽培)>※立茎…萌芽してきた茎を収穫せずにそのまま伸ばすこと
春芽の収穫から立茎:定植 2 年目で 40 日程度、3 年目以降で 50 ~ 60 日を目安に打ち切ります。立茎は、春芽収穫を打ち切る前に、10mm 程度の若茎が確保でき、収量がピーク時の50%以下で、頭部が開く・曲がりが増えるなど、若茎の品質が低下する時期に始めます。
立茎する茎は、L サイズ ( 茎径 10 ~ 14mm) で生育良好、頭部の締まりがよく、割れ・曲がり・帯化などがないものを選びます。立茎方法には 2 つの方法があります。1 つは、短期間に必要な本数を確保し、早めに夏芽収穫を開始する「一斉立茎」です。もう一つは、1週間に 1 本の目安で順次立茎し、立茎開始から終了まで1カ月程度かける「順次立茎(追加立茎)」があります。後者の方が、時間をかけてよい茎を選べるので有利です。
夏芽収穫期の追肥:10a当たり成分量で窒素2 ~ 3kg、カリ2 ~ 3kgを7~10日間隔で施用してください。特に高温期は、土壌の水分不足や大きな増減が、若茎の品質や収量の低下につながります。少量多回数の灌水を行い、畝内部の水分状態を良好に保つようにしましょう。
夏芽収穫後の立茎:夏芽収穫の後半、茎葉の繁茂が不十分な場合は、追加立茎を試みます。立茎する茎はそれぞれ10cm 程度離れるよう均等に配置し、畝の外側には立茎しないようにします。立茎本数は、1株当たり3 ~ 4 本、畝1m 当たり10 ~ 12本程度を目安とします。
高冷地・冷涼地における伏せ込み栽培
2月中旬から3月上旬に播種し、6月中旬までに露地に定植します。その際、十分な株養成期間を確保することが重要です。1年養成の場合は、露地春どり栽培の基肥施用量と同等にします。1年半株養成の場合は、2年目の萌芽開始前に、10a当たり窒素、リン酸、カリをそれぞれ成分量で10kg 追肥してください。
降雪前に、できるだけ貯蔵根を切断することなく根株を堀り取ります。堀り取った根株は、乾燥させないようブルーシートなどで包み、直射日光の当たらない野外に3週間程度放置し、十分な低温に遭遇させます。
ハウス内に電熱線など加温装置を内部に設置した温床(伏せ込み床)に、覆土5cm 以上で根株を伏せ込み、十分に灌水を行います。数日間なじませた後、加温を開始するのが望ましいです。地温は、15 ~ 20℃で管理し、最低気温は5℃以上を確保してください。若茎の凍害防止のため、夜間はトンネル被覆などを行います。加温後2~3週間で萌芽が開始し、1年半株養成した場合は、2カ月前後の収穫が可能です。